強引上司と過保護な社内恋愛!?
「桧山さんがこんなに建設機械の事に詳しかったなんて知りませんでした」

「営業本部に来るまではずっと機械部にいたから」

「は?機械部?」

意外過ぎる過去に驚いて私は聞き返す。

理系大学出身者は建築や土木、機械などの技術屋に、文系出身者は管理部門や営業職に進むのが我が社のセオリーだ。

勿論私は文系だし、桧山さんも同じく文系出身で生粋の営業マンだと思っていた。

「どうして畑違いの営業本部にいるんですか?機械部で何かやらかしたんですか?」

私は眉根を寄せて尋ねると、桧山さんは首をゆっくり横に振る。

「俺もよくわかんねー。会社の方針だから」

そういって桧山さんは建設現場を見上げる。

何だかその横顔が寂しそうな気がした。

私は桧山さんの左手をそっと握る。

無性にそうしたくて堪らない気分になった。

「帰りましょうか」

桧山さんは返事をする代わりに私の手をギュッと握り返す。

寒い中、ずっと佇んでいたせいか、指先まで冷え切っている。

私の体温で少しでも暖かくなったらいいな。

なんて思いながら、東京駅までの道のりを手を繋ぎながら歩いた。
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