ねぇ、松風くん。

*気まずいスポーツ大会



***

「もしも〜し♩」

「あ、もしもし、優です。」


”分かってるよ”と言って受話器越しに笑っている綾菜さん。


「で、暗い顔してどうした?」

「えっ!?」


思わず周りをキョロキョロ見渡す。しかし、ここは私の部屋。どんなに見渡したって綾菜さんがいる訳なんてない。

「優ちゃん今 キョロキョロした?」

「か、からかいましたね!」


楽しそうに電話の向こうの綾菜さんはクスクスと笑っていて、やっと自分がからかわれたのだと言う事実に気づいた。


「ごめん、優ちゃんいじるの楽しくてつい。…で、何かあったんでしょう?」


いつもの落ち着いた綾菜さんに戻ったかと思えば、菜穂同様に綾菜さんもまたすぐに私の異変に気付いてくれる。

「分かります……?」

「当たり前、そんな暗い声で来られたら迷惑だから今日はバイト休みなさい。」

「…っ!綾菜さん…ありがとうございます。」


放課後、いつもならHoney caféへ直行する私だが、今日はマッハで帰宅した。”松風くんと会いたくない”ただそんな理由で。
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