月、満ちる夜に

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 ねぇ、とわたしは前の席の友達の背中をペンの後ろで突っつく。


 どした? と振り返る彼女に、うん、あのねと耳元に手を添えて訊いた。


「あの人、誰?」


 あの人? と示す相手を探して友達が首を傾げるのを見て、わたしは謎の人物に視線を向けながら、そっとペン先をそちらへ向けた。


 真正面には英語の教師が、気難しい表情でテキストを読み上げている。


 なるべく目立たず、静かにわたしたちは会話をつづけることにした。



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