一瞬の
窓際の野田くん
お昼時間明けの教室、あったかい陽射しのなかでの現国はとても眠たげな雰囲気だった。


かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、、
ぱきっ!

『ぁ、』
手元のシャーペンに目を落とす。
何気にいじっていたシャーペンのひっかけ部分が、割れて飛んでいた。
『やばっ』
静かな教室に音が響いたと思った。

「あーぁ、折れちゃったね。」
『え?』私の声じゃなかった。
ばっと声の方を見る。

斜め前の野田くんがこっちを見ていた。
「ね、折れちゃったね。」

野田くんは高校生にしては飛び出て背が高く、窓側の壁にもたれてはよく長い足を通路側に飛び出させていた。窓際の1番前の席だけど、しょっちゅう体は黒板のほうじゃなく、斜めを向いていた。

見てた?いつから?
なんで?
えー、こんな時になんて言えば、っていうか
授業中だよー。先生に見られたらどうする、、。一瞬でパニックのあたし。

「ぅ、、ぅ、、ん。」
小さい声で頷くのが精一杯だった。

折れたねって言ってくれただけなのに、
普通にうんって言えばいいのに、
折れちゃったのが何だか恥ずかしいのと
男の子と話すのが慣れてないのと、
授業中だってことが頭の中を巡って

やっとできた小さな頷き。

野田くんは顔だけちょっと笑ったみたいだったけど、あたしはもうそっちを見ていられなくて何でもないフリで教壇に目を向ける。何でもない風を装う。折れたシャーペンも持ったまま。すぐに変えるのも恥ずかしくて。

あたしの返事はおかしかったよね??
声を掛けてきた野田くんは、眩しいくらいの日射しを受けてひだまりの中にいるみたいだった。大きな体が窮屈そうに机に挟まれていた。
『折れちゃったね』それだけだったのに。

あたしはドキドキの繰り返し。
野田くんはいつから見てたんだろうとか、なんで見てたんだろうとか。あたしの返事はなんて愛想がなかったんだろう、もう少しなんとか言えなかったのか、とか。
先生には他のみんなには聞こえてなかったかな、とか。変な風に見えてなかったかな、とか。

その時間中、斜め前はもう見れなかった。
どうしようもなく火照る顔をなんとか落ち着けるのでいっぱいで、授業は頭に入ってこなかった。どうしようもなく斜め前の席が気になっていた。
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