without you
別に腕時計がなくても、生活に不便も支障もないし、あの腕時計に特別な愛着もなければ、すごく気に入っていたという想いもない。
でも、スッキリしたデザインがいいなと思ったからこそ買ったわけで。

それに、せっかく社長が直してくれた・・・いや違うか。
せっかく社長が修理に持って行ってくれたのに、なんか悪い事をしたなという気持ちは、少し芽生えている。
だけど社長は、私が腕時計をつけていなくても、「あー。おまえ、時計どうした」といったことは、全然言わなかった。

・・・もしかしたら気づいてないのかもしれない。
それって社長っぽくないけど。
気が利くあの人は、いつもさりげなく、広範囲に目を光らせているから。

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