without you
「そっか・・・。俺、立川がもうおまえにしゃべってると思ったから、おまえは知ってると思ったんだが」
「聞いてません。でも私、誰にも言わないので」
「いやー。別に言ってもいいんじゃねえの?ハワイに行って、なんかふっ切れたんじゃねえかな。有馬の方がな。“オープンにつき合う”って、あいつ言ってたし。今頃、社内のやつら全員の規模で知れ渡ってんじゃねーかなー」
「そうですか・・・」
「なんだよ」
「いえ。そのー・・・有馬部長とハワイって、結びつかないなと思って。普段から無口な有馬部長が英語を話したり、アロハシャツを着てる姿とか、なかなか想像できない・・・」

大ウケしている社長の笑い声で、私は呟きをハタと止めた。

「あっ!今の発言は、ここだけの話ですよ?」と必死で言う私に、社長はやっと笑いを止めると、「いいよ」と言ってくれた。

私はホッとしながら、さっき社長からいただいた紙袋の中身を、改めて見てみた。


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