without you
有馬部長に限らず、社内の誰に対しても、私はこういう接し方しかしない。
そっけない言い方に合わせて、顔にも表情が出てないから、「無愛想」とか「ツンとすました気取り屋」と、社の人たちから思われていることは知っているし、そう言っているのを、実際聞いたこともある。
もっとも、言った相手は私が偶然聞いてしまったことも、そこに偶然居合わせてたことすら、いまだに知らないと思う。
だって私は、社内の人たちとは、仕事の用件以外で関わらないようにしているから。
いつでも仕事を辞めて姿を消せるよう、プライベートまで関わるつもりはない。

元カレ(あいつ)から逃げ出して5年経っても、いまだに私は誰も信用してないのか。
それとも、信用できないのか・・・。

「木戸さん」
「あ・・・すいません。行きましょう」

まだ胸の内に巣くっている痛みをふり払うように、私は軽めの段ボール箱を2つ抱え持つと、エレベーターに向かって、サッサと歩き出した。

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