without you
この社長の表情は、怒っているんじゃない。
呆れてる?・・・違う。
「分からない」という困惑の表情だ。
分からないのは私も、なんだけど・・・。

「なんでって・・おまえは俺の秘書だぞ。今は俺の家族よりもつき合いがある。心配して当然だろ」

・・・今、社長は、何となくすごいことを、サラッと言いきった・・・気がする。
それが「当たり前なこと」だと私にも納得できるくらい、社長のセリフは私の心に突き刺さった。

呆然としている私に、久遠社長はニッと笑うと、踵を返して自分の席へと歩き出した。

私は、ツカツカと歩く久遠社長の後姿を見ていた。
大きくて、頼りがいがある、その姿を。
そして、社長の姿が見えなくなってから、私はやっと席についた。

・・・また、社長に驚かされてしまった・・・。

< 295 / 636 >

この作品をシェア

pagetop