without you
「あとは、イベントの時間がもう少し・・あと30分くらい、長くても良かったんじゃないかなぁ」
「うわ。それ最高の褒め言葉だよ、木戸さん」
「え?そうですか?」

少し首をかしげて、横にいる隆三を見た拍子に、木戸のストレートな髪が少し揺れた。

「人の話を座って聞き続けるのは、90分が限度。しかも、それが興味あること、聞きたいことに限ってね。それ以上は集中力が続かないんだよ。だから、今日のトークイベントは、午後4時半から6時までの1時間半、つまり90分に設定。そして、お客さんが飽きないように、ゲストを3人呼んだわけなんだな」
「プラス、それだとゲスト1人につき、30分時間を割ける。しかも1人のゲストに30分トークさせなくていい。3人で意見交わしても構わない。バラエティーが豊富だと、それだけ客も飽きることはない。ゲスト側も助かるというわけだ」
「だからね、“もう少し長くても良かった”と思ってくれたことは、主催側としてはすっげー嬉しい褒め言葉になるんだ」
「なるほど・・・」と言いながら木戸が何度か頷いたそのとき、女将がやってきた。

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