without you
「は、い・・?」
「さっき俺らが話したこと」
「社長の好きな人のこと、ですね?」
「そうだ。そのこと、誰にも言うなよ。俺たちだけの秘密だ」
「あ・・・はぃ、分かりました」
「よーし!互いに秘密を握り合ってる者同士、俺はおまえを絶対クビにはしない!」
「なんかちょっと説得力弱いんですけど・・・ありがとうございます」
「それから。おまえは全然失礼なふるまいなんかしてねえよ。むしろ楽しかった」
「あ・・」
「また一緒に食べに行こう」

なんて誘いは、想いを寄せてる彼女さんにするべきであって。私じゃない。
だから、無難ないつもの逃げセリフである「いつか」とだけ、社長に言った。

「あみか」
「はい?」
「似合ってるよ、メガネ」
「その話はもう終わりにしてください」と社長に返しながら、「似合ってる」みたいな言葉、つい最近使ったような気がする、と私は思っていた。

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