without you
「そーだっ!写真見るか?たくさん撮ってきたんだ」
「はい。ぜひ」

久遠社長は、上着のポケットからスマホを取り出すと、パパッと操作して画面を見せてくれた。
それでも、この大きさだと、もう少し社長に近づかないと・・見えない。
社長も同じことを考えていたのか、お互い一歩、近寄った。

社長の大柄な体が、私たちの周囲に影を作る。
社長の声が、右斜め上から聞こえる。
直接触れていないのに、右隣の社長が発する熱を感じるくらい、近い・・・。

私は、手に持っていたハリネズミのぬいぐるみを、胸元でギュッと握った。
何かから自分を護るように。

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