彼女の「恋」がちょっとおかしい笑笑

この春、俺は高校3年生になった。
新しいクラス、新しい友人、と気持ちは高ぶる筈だが、ほとんどが顔見知りでいつもと同じような感じだ。

若干つまらなさを感じていたがそれもすぐに消えた。

隣の席は話したことのない「彼女」。

背中に届く黒髪に大きな瞳、色白な肌、黒の縁メガネ、華奢な体。
おとなしそうに見えながらも純粋な可愛さが引き立つ「彼女」はちょっとした有名人だ。

3組の山谷が気になっている、数学教師に放課後迫られていた、何人かの生徒と関係をもってる、バイトは夜の仕事、などなど。

どれも嘘かほんとかわからない怪しい噂だが「彼女」の風貌を見るとほんとの様に思えてしまう位の魅力はあった。

「あっ…」

小さく声を漏らした「彼女」の方を向く。
視線の先には落ちた消しゴム。

拾おうと身を屈めた瞬間、窓から風が吹き込んだ。

その時「彼女」の艶やかな黒髪が揺らめき、長かった前髪がその綺麗な瞳を写し出した。
目を奪うには十分な瞬間だった。
タイミングが悪かったとしか言いようがない。

「はい。」

「彼女」の触った消しゴムを俺が今、触っている。

ああ、これが一目惚れか。
そう思った四時間目の授業だった。
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop