魂‐soul‐
「あ、そうそう。今日の夜空いてる?」
 
窓の縁に腕を掛けてもたれた武流が言った。
 
「空いてるで」
 
湊がそう返すと、朔馬も首を縦に振った。
 
「じゃぁ、夜の八時にあの森に行こうぜ」
 
あの森というのは、行方不明者が絶たないという、通称「暗黒森」のことだ。森が入り組んでいるせいか、一度迷えば出られなくなる可能性が高い。

そして最近、奇妙なことが起こっている。

というのも、無事帰還した者に人格変化が現れるのだ。

ことの始まりは若干五歳の男の子だった。

友達とかくれんぼをした際に迷い込んでしまったらしい。

母親が捜索願を出したところ、二日後に森で発見された。

しかし、その日以来、彼の性格が一変したらしい。

母親いわく大人しかった少年は、一夜にして暴力癖をもつようになってしまった。

その少年だけならまだしも、そのような現象が相次いだ。

いよいよ警察も手を打たねばならないと、立入り禁止のフェンスを設けた。

だが、そんな物を立てたところで、人間たちの好奇心をおさえることなどできない。
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