俺様な狼上司に迫られて!






仕方ないと割り切って
資料を持って部長と廊下へ出れば


誰もいない廊下で
部長がフッと口角を上げながら私を見下ろす。





「そろそろ諦めろ。
どんなに反抗してもあの事実は変わんねェぞ?」

「っ、う、うるさいです!」





毎度、この調子。


きっとこれも
あの日私が彼に無断で部屋を出ていったことへの腹いせ。


つくづく腹黒い男だまったく。






「ったく、可愛くねェな。」

「…すいませんね可愛くなくて。」





少しの反抗のつもりで言うこと言葉も
彼にとっては面白いようで

ククッ…と小さく喉で笑いながら
私と一緒に資料室へ入る。







「………。」

「………。」






そしてお互いに黙って資料を元の場所へ返す。


別にこうして資料室に入ったからって
どうこうされるわけではない。

よくある昼ドラのような展開には特にならなかった。


その点では安心している。




ただこうして
行き帰りに会話をするだけ。





(まったく…この人は何を考えてるんだか…。)





読めない彼の行動に私は疑問を持っていた。






「…終わったか?」

「あ、はい。」






戻し終わると
彼が私にそう尋ねて

私の返事を聞いて ドアへ向かう。




しかし




今日はいつもと違って
部長が開ける前にそこで少し立ち止まった。






「…部長?」






私が尋ねれば
部長は振り返って 真剣な顔で







「今日、夜飯行くぞ。」

「……え?」







そう一言だけ告げて
ガチャッとドアを開けた。





(は…?ご飯…?)






私の声を無視して
そのまま廊下を歩き進んで行く部長。

私は少し混乱しながら
その後ろを追った。






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