俺様な狼上司に迫られて!







(………妙だな。)





昼休みが終わり
仕事を再開し始めてから俺は改めてそう思う。




明らかにおかしいのだ。








(絶対様子がおかしい。何で目を逸らす。)







-----そう


あの日からまた普通に過ごしているというのに

今日の、しかもお昼から
あいつの様子がおかしいのだ。



松岡サユリが。








(どうして避けるんだ。
朝まで普通に見てきてたはず。)







実は
朝女子たちに囲まれている時

あいつが冷めた目でこっちを見ているのに気づいていた。




わざと見ないふりをしていたが。






少しは意識してくれたみたいだな
…と、

我ながらあの時気持ちを言ってよかったなんて安心していたのに



この様子だ。








「部長ぉ、これできましたぁ〜!」

「………。」

「部長ぉ…??」

「え?
…あ、あぁごめんね。ボーッとしちゃって。」







…そして俺もまた

そんなあいつの様子に振り回されている。





出来た資料を見せに来た女子が
そんな俺の様子に

大丈夫ですか〜?と話しかけてくる。





…正直こういう甘ったるい声は苦手だ。









「はは、ありがとう。大丈夫だよ。」







俺はいつもの通り
外面良く、優しく笑いながらそう返す。



我ながらよくやるよな…、と思う。



愛想良くしておけば
何事も得だ なんて思いやっていることだが


その分装うのに、疲れる。








(…あいつの前では)







松岡サユリの前では

俺は素直に自分を出せるんだけどな。








「マユコちゃーん、この資料貸してもらってもいい??」

「いいよー!使ってー!」







そう思いながら
またチラッとあいつの様子を見る。



他の人に向けては
いつも通りテキパキ仕事をこなしている。





…何に引っかかってるんだあいつは。








(…っ、気に食わねェ。)





俺はそう思いながら
少し機嫌を損ねた。






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