神のみぞ知る 【哲学ファンタジー】
びくっとした右側通行の自転車男は、軽く会釈をし通り過ぎていった。その様子を少し離れたところから見ていた田吾作はこう思った。

田吾作『あれは、向かって右側が崖になっていたから、あえて左側を通ったんじゃないか。このかごを避けて通るには、やはり逆側を通るのは妥当なんじゃないか。』


~神~ おっと、田吾作もそろそろ気付いてきたようだな。この世界の矛盾に。自転車は左という原則を頑なに守ろうとする者。危険を回避する為には致し方無いと右側を通る者。右側を通る者には左側という原則は頭にないわけではない。敢えて右側を通ったわけだからな。では、左側を頑なに守ろうとする者には相手の事情は果たして理解できていただろうか?

きっとこういうことしか頭に無かったのだろうな。
”お前の左は俺の右”だと。そして、人生の選択肢の中で自分の信じた道を進んでいくだろう。例えそれが、人の道を外れた獣道であったとしても・・・。(完)
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