怪しい羊と迷えるオオカミ'S【完】

なんだコイツ。なによこの人

部屋に戻るとコンビニの袋はガサッと音を立てテーブルの上。


「おっ柊ちゃん目玉焼き作ってくれたんだ」


嬉しそうにキッチンのフライパンの中を覗きこみお皿の上へと滑らせた。



「俺は朝はパン食いてぇって言ってんのに絶対米って何だよなぁ」


テーブルに着くとコンビニの袋の中から取り出したサンドイッチと缶コーヒー。


カチッとプルタブを開け柊哉の作った目玉焼きと一緒に朝食タイム。



カメラマンの瑛太は何日も家を空ける事が普通の生活。


長い時は数か月もの間、家を空ける。


「家賃もったいねぇ。でも家がねぇと困る」


大親友の頼みが聞けねぇなんて薄情な事を言う柊哉じゃねぇよと半ば強引に了承させた2LDKでのシェア生活。


大学で出会い、学部も違い、性格だって好みだってまったく違うのに妙に気が合う2人。


希望の朝食だって違うけれど、自分の事は自分でしましょう。


ソファーから聞こえる柊哉の言葉に黙って財布をポケットに入れコンビニへ行ったのが今朝の事。


半年ぶりに帰国した瑛太の朝はパンという事実をつい忘れていたとは柊哉は決して口に出さない。


そうだろうと思っていても瑛太も言わない。