第二秘書は恋に盲目
10.複雑な弟
今日の夜もデートだった。同じ大学の看護学部の子、たしか名前は…、翼ちゃんだったかな。
正確にはデートをするはずだった、たけど。

母さんの思い付きで、久しぶりに家族揃って夕飯を食べようと連絡がきたのが夕方。思い付きに予定を狂わされるのは今に始まったことじゃなくてうんざりしてるけど、すっぽかすと後が面倒だから家に帰ることにした。
帰宅してしばらくしたら、ちょうど都合がついたらしい兄貴と千歳も家に来た。

兄貴はどうでもいいけど、千歳に会えるのは俺の中ではなかなかの嬉しい出来事。翼ちゃんには悪いけど、千歳がいるならデートをドタキャンしても良いと思える。

楽しい夕食になる!
そう思ったのに、なんだこの違和感は。千歳はずっと下を向いたままで、母さんが話しかけても俺が話しかけても、どこか遠慮がちな話し方になる。
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