愛の歌、あるいは僕だけの星

「あの……、藤原君、ちょっといいかな」

 今にも消え入りそうな、弱々しい声音で自分の名前が呼ばれる。驚いて振り返れば、そこには緊張に顔を強ばらせる女子生徒がいた。確か、何かは忘れたが委員会で委員長をつとめている子だ。銀也は咄嗟に記憶を巡らせて、そこまでたどりつく。まあ、随分と真面目そうな子だ。染めたこともパーマをあてたこともないような黒髪。化粧っ気のない顔は、緊張に強ばっているように見える。

「なにか用?」

 問えば、彼女は言うべき言葉を探すように口ごもりながら必死そうな様子で視線だけをきょろりと動かした。今は放課後とはいえ、他クラスの生徒であれば視線を集めてしまう。ましてや、何かと噂の中心となる銀也に用があるとなれば尚更だ。小さく溜息をつく。

「……ああ、なんだ。仕事の話ね」

「え?」

「ここじゃなんだから、外出よっか。予算案のことなら、副委員長の蒼井に聞いてもらった方がありがたいけど」
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