オークション
あたしはボードの上に指を置いたままジッとその金額を見つめていた。


まだ。


まだだ。


100万円、200万円。


膝を故障しているためか、このあたりで数字の動きが鈍くなり始めた。


この程度の金額ならきっとすぐ返済できる!


今がチャンスだ!


あたしは汗のにじむ指先でボードに数字を打ち込んだ……。


350万円。


自分の打ち込んだ数字が画面上に表示され、あたしは息を飲んだ。


今まではただ見ているだけだった。


椅子に座り、モニターで金額が上がって行くのを見て、購入者を見て……。


それが、今の瞬間変わった。


あたしは完全に参加する側に回ったのだ。


心臓はいつもの何倍もの速さで打っていて、息苦しさを感じる。


画面上の数字は350万円から動かない。


背中にじっとりと汗が滲み、口の中はカラカラに乾いていた。


「これ以上はありませんかぁ?」


モンピーの声が頭の中で響き渡る。
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