オークション
☆☆☆

翌日。


体を慣らすために走って学校へ行ったあたしは、教室に入るなりクラスメートたちに囲まれていた。


昨日陸上部の部員たちを次々と追い抜かし、1人で走っていたところをクラスメートに見られていたようだ。


「いつから陸上やってたの?」


「走る才能があるなんて、全然気が付かなかったよ!」


「マラソンに参加するんでしょ?」


そんな質問を浴びながらあたしは自分の席に座った。


思っていたよりも大事になってきている。


あたしはクラスメートたちの質問に適当な返事をしながら、チラリと藤吉さんを見た。


藤吉さんはいつも通り席に座り、スケッチブックに何か描いている。


昨日のあたしの走りが話題になっているため、今藤吉さんに話しかけている生徒は誰もいなかった。


あたしはクラスメートたちに「ちょっと、ごめん」と一言言って席を立った。


「藤吉さん……!」


藤吉さんはスケッチブックから視線を上げてあたしを見た。


「なに?」


「あの……」


そう言うが、次の言葉が見つからない。
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