オークション
☆☆☆

あたしは流れるようにして走り出し、トップに立った。


沢山の人をかき分けて上がって行くのは難しいから、最初から最後までこの場所を死守するつもりだ。


仮装姿で目立ちたいだけのランナーたちが必死で後ろに食いついてくる。


一度でもトップに立てばカメラがとらえてくれるからだ。


しかし、あたしはそれを許さなかった。


追いつけ来た所を速度を上げてかわす。


そしてスピードを落とし、自分のペースに戻す。


それを繰り返している内に、あたしに追いつくランナーはほとんどいなくなっていた。


先頭を入っているグループにはあたしをはじめとして、何度か大会で入賞を果たしている有名な選手たちだけになっている。


最初から飛ばしている素人のあたしはすぐにバテるだろうと思われていたが、あたしはバテる所かトップを保って走り続けた。


次第にカメラがあたしを捕らえる回数が増えていき、時々聞こえて来る解説者の興奮気味な声を発しているのがわかった。


このマラソンは華々しいデビューとして相応しい。


走っている間にそう感じられるようになっていた。


有名選手に混ざって無名なあたしがトップを行く。


追い抜かそうとしても、抜かせない。
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