オークション
「すごいね! 歴代トップの記録だよ!!」


「そうなんですか?」


「あぁ。君の記録は1時間30分だ」


そう言われ、あたしはようやく笑顔になった。


そうか、歴代トップなんだ。


この大会では1位に一千万円。


記録を塗り替えた場合はそれに5千万円が上乗せされるのだ。


あたしは1時間30分走っただけで、6千万円もの大金を手にすることになったのだ。


「ふふっ」


声を出して笑いそうになり、慌てて口元を手で押さえた。


さっきまでの疲れは吹っ飛び、すぐにでも次の大会のための練習を始められそうな気さえする。


みんなが必死になって記録を更新し、1位を狙っている間、あたしはたった2週間の練習でどちらも手に入れたのだ。


借金350万円を返済しても、まだまだ十分お金は残るのだ。


おかしくないわけがなかった。


「ほら、君がトップだ」


男性に促されあたしは表彰台の上に上がった。


ようやくゴールテープを切った2位3位の選手たちが、息を切らしながらこちらへ歩いてくる。


あたしはその様子を見下ろしていた。
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