オークション
エレナと喧嘩のような事をしてしまってから、あたしは教室内でもエレナと目を合わせる事はしなくなっていた。


エレナがいなくても沢山の友達があたしの机を取り囲む。


その子たちはあたしの才能をすごいと褒めてくれるし、あたしが喜ぶようなプレゼントもくれる。


彫刻の事が学校中に知れ渡った時だって、エレナのような冷たい意見を言ってきたりはしなかった。


いろんなことができるんだね!


そう言って素直に褒めてくれるんだ。


そんな子たちと一緒にいた方が、あたしはよっぽど幸せを感じる事ができた。


「嬉しそうだね」


いつものように友達に囲まれて話をしていると、そんな言葉をかけられてあたしは振り向いた。


「委員長」


あたしは少し目を見開いてそう言った。


委員長と会話をするのは久しぶりだ。


でも、委員長もオークションに行った事のある人だ。


エレナと同じような事を言ってくるかもしれない。


そう思い、警戒する。


しかし、委員長はいつも通り穏やかな表情でほほ笑んだ。
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