オークション
五良野正子
手術の光景は悲惨だった。


モザイクもなにもなく画面にダイレクトに映し出される、人の脳味噌。


まるでじらすようにゆっくりとメスが入れられて、そこからじわりと血が出て来る。


何度かオークションに参加している人たちもさすがに見ている事ができなくなったのか、大半の人がモニターから視線をそらしていた。


それでも、モニター越しに聞こえて来る肉と血の音は吐き気を催すのに十分だった。


ステージからどれだけ離れて座っていても、鉄の臭いが喉の奥まで入り込んできてあちこちから嘔吐する音が聞こえて来た。


それに誘発されるようにして、あたしも会場の隅で吐いてしまった。


何人も気分の悪さを訴えるものがいた。


それでも、ドアは開かない。


手術が終わるまで、絶対に外へは出られないのだ。


スキンヘッドの男性がスタッフに掴みかかり、そのまま別室へと連れて行かれるのを見た。


耐えるしか……ない。


地獄とも呼べるオークション会場内で、あたしは自分の席に戻った。


さっきまで隣に座っていた男性は少し離れた場所で青い顔をして横たわっている。


声をかける余裕なんて、誰にもなかった。


モニターには頭部から引きずり出された脳味噌が大きく映し出されている。


血に染まり赤くなったそれは、太い糸が絡まったような見た目をしている。
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