オークション
2人の力が合わさって限界を突破……。


あたしは唖然として藤吉さんを見つめていた。


五良野正子の限界を、藤吉さんの努力が変えた。


すごい……。


思わずそんな声が出そうにあり、慌てて口を閉じた。


「自分の努力だけじゃないくせに」


エレナは更に藤吉さんを攻撃する。


「なんとでも言えばいいよ。オークションで落札する勇気もないくせに」


エレナを見てそう言う藤吉さんに、あたしは自分の事を言われた気分になった。


戸田啓太さんの脳味噌。


落札するためにボードに触れようとした指先。


だけど結局その勇気もなく、ただ気分を悪くして帰っただけのあたし……。


オークションに興味のないエレナは何を言われても平気な顔をしていたが、あたしは動揺を隠せずうつむいた。


「あななたち、あたしを呼びだす時はいつも2人だよね? つまり、一対一じゃ負けるってことなんだよ」


「そんな事ない!」


エレナは藤吉さんの言葉をすぐさま否定した。


たしかに、エレナなら藤吉さんと一対一になっても自分の言いたいことを言うだろう。


「エレナ……」


あたしはそっとエレナの手を握りしめた。


怒り過ぎてエレナの顔は真っ赤になっている。


我を失って大声になると、誰かに聞かれる危険性もあった。
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