Butterfly
「ううん、それは・・・。って、ごめん!そんなこと話してる場合じゃないか。とりあえず行くね。これ以上遅れたらいけないから」

「ご、ごめん・・・。あ!でも、駅まででも送るよ。もう遅いし」

「ううん。大丈夫。里佳さんがお店の中で待っててくれてるんだ。

近くても帰りはタクシー使うようにって、市谷さんからも言われてるから」

「・・・そっか。ぬかりないか」

「うん。だから・・・今日はこれで」

「わかった」と言うと、蒼佑さんはもう一度私に軽くキスしてくれた。

「じゃあ・・・お仕事頑張ってね。あ、あと、これは里佳さんと玲奈さんから。みんなにも差し入れなの。市谷さんたちに渡しておいて」

小脇に置いておいた、お弁当箱の入った保冷バックを、忘れないように蒼佑さんに手渡した。

「ありがとう。市谷さんたちも喜ぶな」

「うん」

今度こそ「じゃあね」と言って私は車から降りた。

蒼佑さんに手を振ると、彼は、右手をあげて私に笑顔で応えてくれた。


(・・・よかった。蒼佑さんに会えて、話が出来てよかった)


今日の出来事を思う。

少しの時間だったけど、私は気持ちが満ちていた。


(最初は不安だったけど・・・みんなに感謝しなくては)


里佳さんと玲奈さんと、そして・・・時間をくれた市谷さんに。

来たときよりも明るい顔で、里佳さんに報告することができそうだ。

不安はまだまだあるけれど、それでもきっと大丈夫だと、私はそんな予感がした。






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