Butterfly
「瀧石さん」

入り口を過ぎた少し先の壁沿いで、津島さんが私を待っていてくれた。

今日も、黒いパンツスーツをさらりと着こなしかっこいい。

右手をあげる彼女の元に、私はすぐさま駆け寄った。

「こんにちは・・・」

「うん。待ってたわよ」

軽く笑うと、彼女は「こっち」と言って奥に向かって歩きだす。

私は無言で頷いて、遅れないよう早足の彼女の後について行く。

狭い廊下を抜け、突き当たった先の薄暗い階段を上りながら、津島さんが私に言った。

「悪いわね、岡本くんに会いたかったと思うけど。ちょっと外に出てるのよ」

「あ・・・いえ・・・」


(そうなんだ・・・)


会えるかなって、正直ちょっとは期待していた。

少し残念に思ったけれど、こればっかりは仕方ない。
 
「まあ、目的は違うもんね。あなたのお友達のお嬢様、もう本当に全然話してくれなくなっちゃって。

こっちも困ってるのよ。できれば本当になんとかして」

話しながら、二人で階段を上りきる。

津島さんの早足ペースに合わせていたので、二階の廊下に降り立つと、乱れた呼吸を整えた。

視線を感じ、ふっと左に顔を向けると、廊下の端にかたまっているスーツの集団が目に入る。

それは市谷さんや龍平さん、佐渡さんなど見知った刑事さんたちだった。


(・・・なんか、怖い・・・)


集団でいると、ただでさえ感じる威圧感が半端ない。

緊張感溢れる雰囲気に、思わず足がすくんだけれど、なんとか前に進み出て、ぺこりと深く頭を下げた。

「こんにちは・・・。ありがとうございます、お願いを聞いていただいて」
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