初恋は叶わない
混雑の中、落ち着いて見られそうな場所を見つけて、

ようやく自転車は止まった。

さすがに早川も、少し疲れたみたいで、

息が弾んでる。

私は、せめてものお礼にと、自販機に飲み物を買いに行ったんだけど、

お財布を持ってきていないことに気がついてガックリ。

何も買えないままトボトボ戻ってきた私を見た早川は、

笑いながら500円玉を1つ掌に乗せてくれた。



「いきなり連れてくるのが悪いんだからね!」

「俺、スポーツドリンクならなんでもいいから!」



悔しいから憎まれ口をたたいても、

聞こえてないのか、軽くスルーされて、

余計に悔しくなる。

だって、本当に急だったから、

何も用意できなくて、
わかってたら私だって、お姉ちゃんみたいに、

かわいい巾着持って来たのに。

そしたら、お財布だって忘れたりしなかったし…。

海の時もそう思ったけど、

早川って、意外と強引っていうか、

思い立ったらやらなきゃ気が済まないタイプ?

今日だっていきなり来て、いきなり行こうなんてさー。

まるで、花火あるって知ってたみたいじゃん?

いや、知ってたのか…。

あれ?

花火があるから来てくれたってこと?

突然、頭の中がものすごいスピードで回転し始める。

まるで、数学の問題を解いてる時みたい。

1つのひらめきから、一気に答えが導き出されるような、そんな感じの勢いで。
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