初恋は叶わない

部外者

家路へ向かう人の列は、歩道を溢れ出して車道へ広がり、

交通整理のお巡りさんの吹く笛が、

あちこちから聞こえてくる。

蒸すような熱風と人いきれの中、

鼻緒ずれしかけた足を庇って歩いた。

遥か先まで続くテールランプの列に見とれていると、

早川が振り返る。


「コンビニ寄っていい?」

「うん…、あ!」

「何?」

「う、ううん。何でもない」


修ちゃんがバイトしてるコンビニどこだっけ?

あ、わかった!

この辺じゃない。

もっと、家から近いとこにある。



一瞬、わからなくなって焦った。

まさか修ちゃんが働いてるとこに、

早川と一緒に行くわけにはいかないもんね。

水着だって注意されたのに、今度は浴衣だし。

絶対後で何か言われそう。

信号の向こうに見えるコンビニを確認すると、

修ちゃんとは別の系列で、ほっと一安心。

店の入り口では、はっぴを着た店員さんが、

声を張り上げて、客を呼び込んでいた。

表に長机を並べただけのスペースで、

かき氷やポテト、アメリカンドッグなどが、

どんどん売れていく。


「わあ、まるでお祭りだね」

「完全に便乗してるな」

「言えてる。けど、買っちゃうんだよねー」


今ごろ、きっと修ちゃんも…。

似たような背格好の店員さんが、

店内をせわしなく走り回っていて、

それがそのまま修ちゃんと重なる。

私達は、クーラーがガンガンに効いている店内を進み、

自然とドリンクコーナーで立ち止まっていた。


「かりんちゃん?
かりんちゃんだよね?」


突然名前を呼ばれたと思ったら、

私達の間に割って入るように、

覗きこんできた顔を見て驚く。

浴衣姿のレイナさんだった。
< 123 / 159 >

この作品をシェア

pagetop