初恋は叶わない
「今まだ夜中だよ。こっちはバイトの休憩中に、
わざわざ電話してやってんだぞ!」

「修ちゃん、ごめんなさい!あのっ、あたしねっ、」


とにかく謝って、事情を説明しようとする私を遮って、
さらに怒る修ちゃん。


「ごめんなさいですむか!
お前、一体どこ行ってたんだよ!
俺のところにも電話かかってきたんだぞ、
かりん知らないかって!」

「うそ…」

「ホント!」

「ごめんなさい」


私はその言葉に、別の意味を込めて、謝っていた。

心配かけたことよりも、重い罪。

そして、それをまだ修ちゃんが知らないことに、

ほっとしている自分がいた。


「あれから何も連絡無いし、
この時間ならまだ起きてるかと思ってさ。
ま、無事でよかったよ。
あんまりおばさんに心配かけるなよ!」



修ちゃんの声がふいに優しくなって、

私は胸が締め付けられた。

どんなに私のこと、気にかけてくれていても、

それは特別な感情じゃないんだって、

もう知ってしまったから。

それでも十分だと思えたさっきの私は、

どこへ行ってしまったのか。

複雑な気持ちを抱えて、

黙ったままの私に、


「花火どうだった?」


話題を変えようと、修ちゃんが、明るく聞いた。


「うん。きれいだったよ~。
すごい迫力だった」


『修ちゃん、私が花火に行ったこと、知ってるんだ。
誰と行ったかも、知ってるのかな?』


聞きたいけど、聞けないで、

とりあえず、当たり障りのない返事をした。






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