初恋は叶わない
これ、言ったら、みか怒るだろうな。


わかってるんだけど、言わなきゃ止まりそうにない。

私は勇気を振り絞った。


「あ、あの、たぶんこれ、

ただの貧血じゃないかと…」


「は?」


ピタリとみかの動きが止まった。


うぅっ、やっぱ、怒ってる?怒ってるよね?


「あの、朝起きたの遅くて、

朝ごはん食べる時間なくてそれで、

自転車ぶっ飛ばしたら、気持ち悪くなって…」


「はあ?」


全部言い終える前に、

明らかに不機嫌なみかの声が聞こえた。

頭元で腕組みして、私を見下ろしている。


「ごめん!」


「マジで心配したのに!」


拗ねて横を向いてしまったみかの手首を、

横になったまま、そっと掴んだ。


「ホントごめんね、でも、大丈夫だから。

行こうよプール!ね?」


「望月、ホントに大丈夫なの?」


ヒロ君がみかに聞こえないように、

こっそり聞いてくるので、私は激しくうなずいた。

それならと、ヒロ君も、みかの説得に協力してくれる。


「みんなの都合が合う日なんて、

もうなかなかないと思うよ。

せっかく用意して来たんだし望月が大丈夫なら、

行こうよ」

刺激しないように、優しい口調で声をかけるヒロ君。

みかは何も返事をしなかった。


あー、こうなっちゃうと、

なかなか機嫌直らないんだよね。

今日はもう無理かもしれないな。
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