初恋は叶わない

偶然

考え過ぎてちょっとテンション下がった状態で、

着替えを終えて、早川を探してみる。

途方に暮れて、

帰りたいような気持ちになってきたトコロに、

「遅い!」

って、部活の先輩ばりの、気合いの入った声がする。

「また、倒れてんのかと思ったぜ」

ぶすっとして、怒ってるのかな?

「ごめん」

キミのこと考えてましたとは言えないし。

「ほら、行くぞ。

早くパラソルはいらないと、オレまでぶっ倒れそうだ」

え、もう借りてくれたんだ?

よく見ると肩に担いでるし。

「さすが、サッカー部。」

そんな言葉で片づけるのは申し訳なかったけれど、

さりげない優しさが、くすぐったかったから。

「ちょっと、置いてかないでよぉー!」

大声を出して、照れを隠すのが精一杯だった。

もしかしたら、向こうも照れていたのかもしれない。

一応私はビキニだったし、

なぁんて、それは自意識過剰かな。

大急ぎで用意したバッグの中に、

ビニールシートが入ってて助かった。

焼けるように熱い砂の上に、

そのままなんてとてもじゃないけど座れない。

少しは役に立ててよかったと、

ほっとする私の隣に早川が腰を下ろした。

「あっちぃなぁ。」

眩しそうに目を細めてるけど、嬉しそうな顔してる。

ホントに自分の肌が、

日に焼かれてるって、

実感できるほどの日差しだというのに。

「望月、日焼け止めちゃんと塗っとけよ。

お前普段外出てねぇんだから、

多分大変なことになんぞ」

「あ、そっか。そうそう、日焼け止めだよね。」

塗らなきゃいけないのはわかってる、

わかってるんだけど…。

どうやって塗ったらいいの?

背中なんて自分で塗ったことないけど、

届くのかな?

まさか早川には頼めないし、

自分でやるしかない!
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