初恋は叶わない

接近Ⅱ

ようやく訪れたいつもと変わらない光景。

どうなることかと思ったけど、

そんなに色々聞かれなかったし。



気持ち切り替えて、ラグの上で参考書とにらめっこ。

うんうん唸っている私を、

椅子の背もたれを抱いた修ちゃんが見下ろしている。

ふいに視線を上げると、 目があった。


「ん?」


って目だけで聞いてくるから、

「何もないよ」って意味で、

首を振る。

これもいつものこと―、

なのに頬がカッと熱くなるのが触らなくてもわかる。


『なんで?』


さっきから、どうしても集中できない。

目の前に座る修ちゃんが気になる。


さっきの後遺症?


修ちゃんが視界に入るだけで、

Tシャツ越しに伝わってきた体温とか、

全身が包み込まれた感覚とか、

リアルすぎるほど蘇ってきて、

何にも考えられなくなっちゃうよー。

正直、さっきから、何も頭にはいって来ない。


「進んでるか?」


とうとう修ちゃんがそばまで来て、

私の右隣に座った。

進んでるわけないじゃない。

知ってるくせに。

のぞき込まれたノートには、

問題だけしか書かれてない。


「全っ然できてないじゃん」


頭突きと言うよりはずっと優しく、

修ちゃんの頭がコツンとぶつかる。


「どした?」


ゾクリ。

耳元で囁くような声に、体が震えた。

言えるわけない。

修ちゃんのこと考えてたなんて、

絶対、言えない。

いつの間にか修ちゃんの左手が、

私の背中の後ろにつかれてる。

顔が近すぎるように感じるのは、

気のせい? 
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