わたしの意地悪な弟
 放課後、樹が教室までやってくるのを待ち、利香と一緒に教室を出る。

 彼はわたしの鞄を取り上げる。

「俺が持つよ」

「ありがとう」

「体調が悪いなら、学校無理しないでよかったのに」

「もう治ったから大丈夫だよ」

「じゃ、お先にね。樹くん、千波をよろしく」

 利香は一足先に階段を下りていく。

 わたしたちも家に帰ることにした。

 学校の外に出て、少し歩くと取り巻くような視線から解放されて、ほっと肩をおろす。

「まだきつい?」

「大丈夫だよ」

 わたしは苦笑いを浮かべると前髪に触れる。

 昼休みの出来事が脳裏をよぎり、胸が痛む。

 また、明日は今日と同じような日が待っているのだろうか。

 そう思うと気が思いが、今日の出来事を封印して、いつも通りのわたしで彼に接することにした。
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