わたしの意地悪な弟
わたしを好きだと宣言した弟
 わたしは時計を見ると、ノートを閉じイスから立ち上がる。

 今日は樹と初めてのデートに行く日だ。

 買い物をして、ケーキを食べにいく予定になっていたのだ。

 そろそろ準備をしようとクローゼットに歩みかけたとき、部屋の扉がノックされた。

 返事をすると、母親が顔を覗かせた。

 彼女の表情には笑みが全くない。

「千波、ちょっとリビングまで来てほしいの」

「分かった」

 嫌な予感を胸の奥に閉じ込めながら、わたしが廊下に出たとき、樹の姿があるのに気付いたのだ。

 わたしはドキッとしながらも極力その気持ちを顔に出さないように努めていた。

 わたしと樹は母親に連れられ、リビングに入る。

 父親の姿はどこにもない。

 買い物にでも行ったのだろうか。

「お父さんには買いものに行ってもらっているわ」


 母親はわたしの気持ちをくみ取ったようにそう口にすると、ダイニングテーブルに座るように促した。

 彼女はテーブルの上に置かれていたフォト用紙を裏返すと、わたしたちの前に差し出した。
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