わたしの意地悪な弟
 朝食をとると、樹と一緒に家を出た。

 恵美の件はあれで収まったのかは分からない。

 恵美は翌日以降は普通に学校に来ていたようだが、二学期を終えるまで、彼女は何も樹にリアクションを取ってこなかったようだ。写真をばらまかれた形跡もなかった。

 だからといってもう迷うことも、気持ちを偽るつもりはないけれど、不安は少なからずある。

「そのうち、学校に広まっていたりするのかな」

「広まっていても、板橋先輩もいるし、大丈夫だと思うけどね。それに、俺もいるから」

 囁くような甘い言葉にわたしの顔が赤くなるのは必然だ。

「何を言っているのよ」

「何って、俺は普通のことしか言っていないけど」

 そう。過剰に反応したのはわたしで、樹の言葉はいるといっただけで第三者的に見れば何もおかしいことはない。

 わたしは文句を飲み込み、頬を膨らませ樹を睨む。

 そんなわたしを見て、樹は優しいながらもどことなく意地悪に微笑んでいた。

                                   終
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