わたしの意地悪な弟
「お前がどこに行きたいかも含めて考えておけよ」

「分かった。考えておくね」

 部屋に戻り、パソコンを起動したところで我に返る。

 この話の流れだと、樹自身は別に行きたいところもなかったんだろうか。

 それにわたしが決めてしまえば、本来の目的は樹が行きたいところに行くはずなのに、これだとわたしの行きたいところになってしまう。

 考えると言った手前、とりあえず候補をいくつか挙げておこう。

 そう思ったが、少ししてカフェや雑貨屋さんといった自分の行きたい場所ばかりをピックアップしていたことに気付く。

「樹はどんな場所に行きたいのかな」

 少し範囲を広げても樹の行きたい場所が思い浮かばなかった。

 小学校を卒業してから、一緒に遊びに行くという機会も皆無だったからだろうか。

 樹が喜ぶ場所という制限があるため、難解なパズルを解いているみたいだったが、樹と遊びに行くのを考えるのは意外に楽しかった。




 翌日、学校で利香に樹とのやり取りを話すと、彼女はごめんと言いながらも楽しそうに笑っていた。
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