ショートケーキのいちご

四月 春

あたしは、希望と不安にみち溢れていた、

はじめての転職。
はじめての仕事
はじめましての人達。

どことなく期待はあるが、不安もおおいにある。
そんな気持ちをもちながら、はじめた。

そんな不安もこの一ヶ月でふきとんだ。
優しい先輩や同期たち、話す笑い声が響く日々に
それなりのやりがいもでてきた。

一つのことをのぞいては。


「おい!柚木さん!これ、戻しておいて。」

と言うと手もとに持っていた紙を私へと投げつけてきた。

「……はい。わかりました。」

私は小さな声で答えると
彼はため息をついてさっていった。
彼の名前は、雪村和人。
私の苦手な人である。

「大丈夫?はるかちゃん……?」
私の後ろから声をかけてくれたのは、野々宮陽斗。
通称、チャラ斗である。
誰にでも優しく、女子には大人気である。

「大丈夫です!ありがとうございます‼」
とわたしはにっこりと答えるとその紙を持ち、ファイルがある場所へと急いだ。

「ほんとに?
なんかあったらいってね。アイツ、愛想ないけど、いいやつだからさ。でも、むりはしちゃだめだよー?」

という声がしていたが、私は振り返りもせず、歩いていった。

ファイルにしまい、ようやくふとため息をつく。

「雪村先輩相変わらずだなー」
と一人つぶやく。
並べられたファイルを見つめていると

「柚木、なにやってんの?」
と声をかけられた。

人がいないと思っていた私は、声をかけられたことにおどろき、すごい顔をした。

「あはは笑っ」
と笑い声が響いた。
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