フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
「…もう亡くなって一年が過ぎてますから。もう私も落ち着きました。母は花が好きで、うちにもプランターにたくさんの花が植えられてます。お墓にも花を供えていたら、母も喜ぶかなって…」

「…かすみさん」

母の事を思い出したかすみの目から、涙が一粒零れ落ちた。

薫は、そんなかすみの涙を指の腹で優しく拭った。

「…お母さんの事、大好きだったんですね」

薫の言葉に、かすみは柔らかな笑みを浮かべて頷いた。

…どうしてだろう?薫の前だと、とても素直な気持ちになれる。

…薫が優しいからか。…だが、優しい男に会った事は何度もあるが、こんなに素直な気持ちになれた事はなかった。

「…すみませーん、ちょっといいですか?」

他の客が薫を呼んだ。

「ごめんなさい…仕事のお邪魔でしたね」
「いいえ、私がかすみさんを引き留めてたんですから」

かすみは、薫に会釈すると、フラワーガーデンを後にした。

*********

薫は仕事をしながらも、かすみの事が頭ら離れなかった。

かすみの事を知るたびに彼女に惹かれる。もっと、もっと、かすみの事が知りたい。もっと、もっと、かすみに近づきたい。

でも、どうしたらもっとかすみに近づけるんだろう?かすみに会えるのは、月に1度。結婚式場に仕事があれば、会えるが、今月は、中旬までは式の打ち合わせもない。

かすみの連絡先すら知らない。

そう思うと、溜息しか出ない。気を取り直し、薫は花の配達に向かう。薫の店は何軒かの店と契約していた。花を持って行き、いけたり、花だけを届けたり。

普通の花屋とは少し違ったスタイルだ。
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