フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
その日を境に、薫も仕事が忙しいのか、すれ違いの日々が月末まで続いた。

「…寂しいな」

自分のデスクで事務処理をしていたかすみの口から、本音がポロリとこぼれた。

「…俺なら、そんな想いさせないけど」
「…⁈せ、専務…何かご用でしょうか?」

岳には、つい、ぽろっと出た本音をよく聞かれるな…と、内心焦りつつ、事務的な返事をする。

「…コーヒーをお願いしようと思って」
「コーヒーですね。わかりました。すぐ、に…あの?」

スッと立ち上がったかすみの手首をギュッと掴んだ岳。当然かすみは驚き振り返る。

「…俺なら、君に、寂しい想いはさせない」
「…専務!」

…不可抗力。

その手首を引っ張られ、かすみはバランスを崩し、岳の腕の中にスッポリと包まれた。

かすみはどうしていいかわからず、固まる。

「…君の事が、好きだ。俺の傍にこうやって、ずっといて欲しい」

「…わ、私は」

「…彼氏が大切?…君に寂しい想いをさせる男より、俺の方が、幸せにしてやれる」

そういった岳は、キスをしようと、かすみに顔を近づける。ハッとしたかすみは、抵抗するも、男の力に敵うはずもなく…ギュッと目を瞑った。

…トントン。

…キスする数センチのところで、ノックが聞こえ、阻止された。

「…なんだ?今忙しいんだが?」
「…遠藤さんに、お客様がお見えですが」

…その声は、悠人だった。
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