ドラマ好きの何が悪い
「今度連絡するからさ、ハルカちゃんの連絡先教えてくれる?」

「え?本当にいいんですか?他の女子達に恨まれちゃうな。」

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。ほんと、天狗になっちゃいそ。」

そう言いながら、カイトは両手をグーにして自分の鼻の前に重ねた。

ばっかじゃない。

大人げない。

こんな落ち着きのない35歳、こっちが見てて恥ずかしいわ。

そんなくだらない会話で有頂天になってるカイトを無視して、枝豆を口に放り込んだ。

「お前もさ、くだらないこと気にしてないで、前に進んでいけよ。別にシュンキじゃなくても誰でもいいからさ。」

ふん。

何かっこつけて言ってんの。

更にそんなカイトを無視した。

カイトはハルカと連絡先を交換し、一気にジョッキを空けた。

相変わらず飲むの早いね。

それだけは、同じ酒好きとして尊敬するわ。

「じゃ、俺行くわ。明日の朝も出張で早いからさ。」

そう言うと、すくっと立ち上がり上着を腕にひっかけた。

「ごゆっくりー。」

そう言うと、右手を挙げて颯爽と店を出て行った。

「なに?あいつ、飲み逃げ?!」

憤慨している私の腕をハルカはつついてきた。

「これ、ミナミ先輩。」

ハルカが差し出したのは、さっきカイトがハルカに渡した自分の連絡先のメモと大きなお札が二枚だった。

「何これ。」

思わずその紙切れとお札をのぞき込む。

「連絡先のメモと一緒に重ねて渡されたの。もらいすぎだよね。ほとんど立花さん飲んでないし食べてないのに。」

ハルカの目は感動で少し潤んでいた。

あいつ-。

こんなところでいつも点稼いで!

と思いつつも、粋なことをして帰って行ったカイトに少しだけ感動している自分に驚いていた。
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