私の好きを受け取って。

『梨恵、今日の夜空いてるか?』

パソコンの脇からひょこっと顔を出してそう声をかけてきたのは同期の中田翔平

『これが終われば空いてる。』

終業まで残り30分弱 この面倒な書類を終わらせれば残業せずに金曜日の夜をすっきりと迎えられる。
書類をヒラヒラと振りながらそう返す。


『っし、それ片付けたら飲みいくぞ』

行かないっていう返事は最初からないと決めつけてかかるこの男はどうやら今日やるべき業務は片付けたらしい。
それなら手伝ってくれればいいのに。まぁ、私の仕事だからしっかりやりますけどね。

『りょーかい』

飲みに行くためならエンヤコラ、でスピードを上げた結果、終業時間ギリギリにどうにかあのめんどくさい書類を終わらせた私と翔平はふたりで会社を出た。




『今日は鍋で暖まりたいな。』

グレーのコートの首もとをキュッと握りしめながら翔平がつぶやく。

外に出た瞬間の冷たい空気を浴びて考えることは同じだったらしい。

『賛成ね。』

私もワインレッドのマフラーを巻き直しながらそう答えた。


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