やさしい先輩の、意地悪な言葉
次の日曜日。
この間と同じ駅の同じ場所で神崎さんと待ち合わせた。

どこに行こうかいろいろ悩んだけど、近くの美術館に行くことにした。
美術館なら、静かにしなきゃいけない場所だから緊張して話せなくなって気まずい……ってことが起こらなそうだから。



「瀬川さんは絵とか好きなの?」

「は、はい。見るのは好きです。自分で描くのはちょっとニガテですけど……」

「俺も。前にキャンペーン商品のチラシ描けって言われて、すみっこにウサギを描いたら周りの人たちに『宇宙生物?』って言われて」

「ふふふ」

よかった。デートに誘った時の神崎さんの反応がいまいちだったから不安だったけど、神崎さんも楽しんでくれてるよね?


私も、最初はちょっと緊張してたけど、この前と同じでだんだんとそれも和らいできて。


やっぱり神崎さんのこと好きなんだなって思ったし、もっと仲よくなりたいなと思った。


……私は特別なんかじゃない、ときちんと理解してるはずだ。
でも、こうして過ごしてると……なんだか勘違いしてしまいそうにもなって……。

特別じゃなくても、神崎さんの周りの女性の中では一番近い距離にいるんじゃないかとか思ってしまう……。



美術館でゆっくりと過ごしてから、カフェでお茶をして、そのあとはのんびり街を歩いた。


楽しかった。
無理なく話せたし、自然と笑えたし。神崎さんと過ごしてる時の、やさしい時間がほんとに心地いい。
< 111 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop