やさしい先輩の、意地悪な言葉
意地悪の意味
なんだか……キラキラして見える。
私は、なんでここにいるんだろう。


約束の土曜日。私は、神崎さんとの待ち合わせ場所である駅の入り口の前にある時計柱ーーから少し離れたところにあるネコの銅像の物かげから、そこで待つ神崎さんを見つめていた。

待ち合わせ時間は午前十時。今はその十分前だけど、神崎さんはすでにそこにいて、時計柱を背にして私のことを待ってくれている……のですが。


人目をひく高身長に、スラっとした長い手足。
しかもそこに端正な顔立ちが追加されれば、通りかかる女性のほとんどが神崎さんに目を奪われてもおかしくないと思う。
というか、実際、ここから見える限りでも何人もの女性たちが立ち止まって、神崎さんに声をかけるタイミングをうかがってるのがわかる。
そんな女性たちの目が怖いのもあり、私はさっきから神崎さんに近づけず、結構前から駅には到着してたものの、一向に神崎さんと合流できていない。

……私なんかが神崎さんの待ち合わせの相手だとわかったら、周りの女性たちはどう思うだろう。

さっきから、何人かは実際に神崎さんに声をかけている。神崎さんは断ってくれているけど……。


とはいえ。もう待ち合わせの時間になってしまう。
今日のこの待ち合わせが、いくら神崎さんからのお詫びとはいえ、会社の先輩をずっと待たせるわけにはいかない。

私は勇気を出して、銅像から体を出し、神崎さんのもとへ向かった。
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