やさしい先輩の、意地悪な言葉
……はっ。

私は目を開けると、慌てて体を起こした。

私も寝ちゃってた!

あれ? 私、電気点けっぱなしで寝ちゃってたはずなのに、電気が消えてる。
ラブホだから当たり前だけどカーテンが閉まっているから、部屋はとても薄暗い。


神崎さんはまだ寝てる? と思って自分のとなりに目を向けると、



……いない!!?


私が眠ってしまう前までは確かにとなりで寝ていたはずの神崎さんの姿が、なくなっていた。
さっきまで神崎さんが横になっていたその場所に手をあてると、まだ温かかった。

もしかして、酔ってる状態でひとりで帰ってしまった? と一瞬慌てたけど、ガタン、という物音が洗面所の方から聞こえた。

よかった、洗面所にいるんだ、と安心した。電気は神崎さんが消してくれたのかな。
私はとりあえず、手で髪を簡単に整えた。


……あっ、今何時だろ。休憩時間のつもりで入ったのに結構寝ちゃった気がするけど、料金どうなるんだろ。

腕時計を見ると、今は二十二時半を少し回ったところで、思ったより時間が経っていなかったことに私は少し安心した。


ベッドを降り、丸テーブルの上に置かれていたこのホテルの料金表と思われる折りたたみの紙をぺら、と開いた。

それは確かに料金表で、休憩時間は二時間ごとになっていた。

枕もとに置きっぱなしになっていたハンドバッグの中から財布を取り出し、そこからさらに、ここに入った時のレシートを出す。

ここに入った時間は、レシートによると二十時二分になっていたので、あ、二時間を過ぎてる……と思ったけど、料金表をよく見ると、二十時以降に入った場合は、すべて宿泊料金になると書かれていた。
ということは、今ホテルを出るのも、明日の朝出るのも、料金は変わらないってことか。いや、さすがに朝まではいないけど。

そういえば、お金を前払いした時に受付の人が料金の説明をしてくれていた気がするけど、あの時は神崎さんが吐きそうって言うから動揺してあまり聞けてなかった……。
確かに、二時間の休憩にしては料金が高いと思ったんだよね……。でも今までラブホにはあまり入ったことなかったから、よくわからずに支払いをしてしまったというのもある。
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