④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
「…ま、あれだ。人それぞれだけど…俺は、食い物は旨そうに食う方が好きだし、ちょっとくらいふっくらしてた方がいいと思うけどな」

 抱き心地が良いからな。

「そうですか!?
 やっぱりそうですよね~」

 …うっ。
 ぱっと朝日に弾けた顔に、大神は一瞬くらっと目眩を感じた。高鳴る鼓動を、腕時計を確認するふりで誤魔化してソワソワと腰を上げる。

「…い、いかん、もうこんな時間だ。じゃあまた会社で。今日は遅刻するなよ」

「ふぁ~い」

 気の抜けた燈子の返事を聞くか聞かないかのうちに、大神はスタートダッシュをかけて、その場を逃げ去った……


 ああ、危なかった。
 あのままいたら、ギュッとしてチュッとしてしまいたい衝動を、押さえ切れなくなったことだろう。

 しかし、ラッキーだったな。
 朝から彼女に出くわすなんて。

 そういえばアイツの家、この近くだったっけ。


 ニヤッ。

 思わず頬を緩めていると、通りすがりの老夫婦に、不気味そうに体を引かれ、慌てて顔をもとに戻す。


__しかも…

 アイツは気付かなかっただろうが、実はさっきの、こっそり間接キスだった__


 ニヤッ。


 と、向こうからやってきた朝練に向かう部活生の一団が、チラチラと彼を見ながら囁いている。
 彼は再び、キリッと顔を整えた。

 
__うおっ、俺としたことが…
 ダメだな、アイツが絡むとどうも調子が狂ってしまう。 

 さて、余分なカロリー分、もう1km延ばすか。

 今日は何だか良い日になりそう、今朝の夢、やっぱり逆夢だったかな_______
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