強引同期と偽装結婚することになりました
やっぱり、無反応。それでも隣の優木くんはどこか嬉しそうでやっぱり自己満足でも結婚式を見せてあげたいという優木くんの思いをみんなでカタチに出来て良かったと思った。


「それでは指輪の交換を」


式は順調に進み、無反応とはいえ、おばあさんも暴れたりはすることなく、指輪交換まできた。

今回、指輪をどうしようかと話し合っていると美津子さんがこれを使ってほしいと私と優木くんに貸してくれた指輪。


「これ、ばあちゃんとじいちゃんの結婚指輪。良かったら使って」


シンプルなシルバーリング。優木くんのおばあさんのものと5年前に亡くなったおじいさんのものらしい。おばあさんはおじいさんが亡くなった後からどんどんと元気を失くしていった。

だからせめて、この指輪で何かを思い出してくれればという美津子さんの願いが託された指輪。


優木くんがおばあさんの指輪をそっと手にし、私の左手薬指に嵌める。ピカピカに輝いているとは言えないけれどおばあさんがずっと肌身離さず付けていた指輪。


そして、私が優木くんの左手薬指に嵌めるのはおばあさんが大好きだったおじいさんの指輪。
< 116 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop