強引同期と偽装結婚することになりました
帰りの車の中、優木くんは運転してくれているけれど手は繋がれている。浜辺から車までの帰り道、彼に導かれるように手を引かれた。

そして、車に乗り込んだときに一度離したもののまた走る前に手を差し出され、その手を取った。


その繋がれた手がさっきまでの出来事が夢ではなかったと実感させる。突然の思いがけないプロポーズを戸惑いながらも受けたけれど、本当に良かったのかな。


でも、そう考える私をちゃんと優木くんは分かっているみたいに「もう、決まったからキャンセルはきかない。お互いの親に挨拶に行ったらすぐにでも籍を入れるから」と強引に決めてしまった。


優木くんのことは本当に尊敬しているし、優しくて素敵だと思う。でも、恋愛対象として見ないようにしていたし、私なんてまず、あり得ないとしか思っていなかった。

それがこんな風に結婚をするなんてまだ信じられない。


「あ、あのね。その、優木くんには好きな人とかいなかったの?」


「・・・好きなやつはいるよ。でも、片思いだった」


「ダメだよ。それならこんな風に結婚するなんて。その人にちゃんと気持ち伝えて・・・」


「いいんだよ、それはもう。それより、お前となら楽しくて明るくて幸せな家庭を築いていけると思う。だから、お前もこれからはそんなくだらないバカな男のことなんて思い出すくらいなら俺との未来図でも考えてろよ」
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