現実世界で捕まえて






人の気配を感じた。

テレビから聞こえる占いの声がテンション高い。
てんびん座は11位?
昨日は最下位だったからまぁいいか。
ポットのお湯が沸いたね。今日の気分は紅茶がいいなぁ。

「ごはんできました」

リビングと寝室を仕切っている薄いカーテンの奥からそんな声。
おかーさん?
いやちょっと聞いてよお母さん。変な夢を見たよ。
死神がやってきてね
私はあと半年で死ぬから、その前に5つの願いを叶えてくれるって言うんだよ。
死神だって。笑えるよね。
それで無制限のキャッシュカードくれてね、その暗証番号がまた笑えて

「遅刻しますよ」

低い声が脳天に突き刺さったように目が覚めた。

私はベッドから起き上がりリビングへ足を入れると

男がエプロン着けて目玉焼きを焼いている。

死神……まじか……夢じゃなかったんだ。

「早く顔を洗ってきなさい」

「はいっ!」

どうして自分の家で命令されなきゃいけないのだろう。
それは彼が死神だから。

笑えない現実。







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